茶屋「養翠亭」は鬼瓦に「文政四年瓦屋久八」の線刻があり、総建坪94坪 、部屋数19室の建物で、藩主が使われた別荘建築として旧地に旧状のまま残る全国的に珍しい建物です。又、殿様が使われた部分だけではなく供周りまでほぼ完全に残されています。老朽化のため平成3年から平成6年にかけ文化庁所管文化財保存全面解体修理をし、往事の姿を留めています。
御座の間
紀州徳川家第十代藩主徳川治宝が来遊されたおり、お座りになる座敷で、建物全体から観て最高所にあり、以下供周りに向かって各部屋一段づつ低くなっていきます。その意図するところは数寄屋の中で上段の間を設けるのは不自然で部屋全体を上げることによって建物全体から観て上段の間に仕立てているのです。又、「御座の間」周囲の柱は名栗と言う面取装飾が施され、「御座の間」周囲以外では観られません。「御座の間」から庭園を観ると庇が深く出ています。それにより上方が切られ、パノラマ効果で横の広がりが感じられ、庭園を鑑賞する最高場所であることが実感できます。
左斜め登り御廊下
斜め登り廊下内部外来の御客様は、駕籠にて正門より来園され、養翠亭「御次座敷」で暫時休息された後、殿様の居られる「御座の間」へ案内されますが、「御次座敷」と「御座の間」を結ぶ渡り廊下が「左斜め登り御廊下」です。この渡り廊下は畳敷きで、左斜め上に振った特異な構造になっており、この為、畳や障子などは全部菱形になっています。この様な遺構は全国唯一の物です。
畳台目茶室「実際庵」
「御座の間」の西に隣接して 和歌山県下最古の2畳台目茶室「実際庵」があります。天保七年(1836)に編纂された「西浜御殿御額鈔」に御数寄屋付属として大徳寺三七八世 無学禅師筆「実際庵」、表千家八世 啐啄斎「竹翠」の記述があり、その内、啐啄斎「竹翠」は現存し、茶室 軒下に掲げられた痕跡が確認されております。無学禅師は寛政三年(1791)、啐啄斎は文化五年(1808)に没していますので茶室の好みは従来 了々斎好みと言われていますが、解体修理の結果、以前より他所に有った茶室を養翠園に移したのではなかろうかとの事で、今後研究されなければならないところです。
以下供周り
このほか、養翠亭には家老の間、囲炉裏の間、侍たまり、御膳所、御湯殿、等 供周りまで残されております。
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